家と財産を守るための〜不動産の相続対策
家と財産を守るための〜不動産の相続対策
文書作成日:2024/09/20
建物の検査済証とは

建物の検査済証とは何ですか?

Q
今月のご相談

 実家(平成11年築の一戸建て)を相続しましたが、持ち家があるため売却しようと考えています。査定を依頼した不動産仲介会社より、建物の確認済証および検査済証等の保管の有無を聞かれました。確認済証は保管されていましたが、検査済証は見当たりません。
 検査済証とはどのような書類でしょうか。また、検査済証がない場合はどうなるのでしょうか。

A-1
ワンポイントアドバイス

 検査済証とは、建築基準法で定められた「建築確認、中間検査、完了検査」のすべてを終了し、その建物が建築時点の建築基準法令に適合していると認められたときに交付される書類です。
 検査済証により建物の遵法性を確認することができるため、検査済証がない場合、金融機関の融資の審査や一定規模の建物の増改築や用途変更において支障をきたすことがあります。

A-2
詳細解説
1.建築確認、中間・完了検査とは

 検査済証の交付には、「建築確認、中間検査、完了検査」のすべてを終了している必要があります。

(1)建築確認
建物の設計段階で、建築基準法令に適合しているかどうか確認を受けることです。合格すると確認済証が交付されます。確認済証がなければ工事は着工できません。

(2)中間検査
工事の途中に受ける、基礎や柱、梁の骨組み等の構造部分等が、建築基準法令に適合しているかどうかの検査です。合格すると中間検査合格証が交付されます。

(3)完了検査
建物の工事の完了後に受ける、建築基準法令に適合しているかどうかの検査です。合格すると検査済証が交付されます。

2.検査済証の交付を受けていない建物と対策

 検査済証は、建築基準法が施行された昭和25年11月より交付が義務化されました。
 しかし、平成29年10月に国土交通省が公表した「建築行政に係る最近の動向」によると、ご相談者様のご実家が建てられた平成11年の交付率は46%に留まっており、交付を受けていない建物が半数以上を占めています。

 検査済証の交付を受けていない建物では、増改築や用途変更に伴う確認申請にあたり、原則として既存建物が建築時点の建築基準法令に適合していることを確かめる必要がありますが、既存不適格建物(建築・完成時の旧法・旧規定の基準で合法的に建てられたもの)であるのか、違反建物であるのかの判断が難しく、調査に多大な時間と費用等を要する場合があります。
 結果として、増改築や用途変更ができない事例も発生しています。

 検査済証の交付の対策として、平成15年2月に国土交通省が金融機関に対し「新築の建築物向け融資における検査済証の活用等による建築基準関係規定遵守への協力要請(依頼)」が行われました。検査済証がないと金融機関からの融資が難しくなることから、交付率は向上し、平成16年には72%、平成26年には94%となりました。

3.検査済証交付の有無の確認

 ご相談のケースのように検査済証の交付を受けたかどうか分からない場合、ご実家を管轄する役所で検査済証交付の有無を確認することができます。

(1)検査済証が交付されていた場合
検査済証の再発行はされませんが、代替えとして台帳記載事項証明書が発行されます。
この台帳記載事項証明書には、建築確認申請・完了検査を受けた年月日・検査済証番号等が記載されています。検査済証が交付された建物であると証明することができ、金融機関の融資の審査における申込書類となります。

(2)検査済証の交付が確認できない場合
検査済証のない建物が、新築当時の建築基準関係規定に適合していたことを民間機関等に証明してもらう方法があります。具体的には、平成26年7月に国土交通省が公表した「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」に則って、建築基準法適合状況調査報告書を作成してもらいます。
この報告書は検査済証とみなされるものではありませんが、建築時点の建築基準法令に適合していることが認められれば、金融機関から融資を受けることができます。

 不動産の売買では、書類の保管状況等で対応策が変わることがあります。また、住宅地としての需要が高ければ、実家を取り壊して更地売却という選択肢も考えられます。まずは売却の検討をされる段階で、不動産売買の専門家である不動産仲介会社に、売却方法等について相談されるのがよいと思われます。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
 本情報の転載および著作権法に定められた条件以外の複製等を禁じます。