家と財産を守るための〜不動産の相続対策
家と財産を守るための〜不動産の相続対策
文書作成日:2023/09/20
空き家の3,000万円控除の適用範囲

離れがある場合の空き家の3,000万円控除は、敷地全体について適用できるのでしょうか?

Q
今月のご相談

 自宅には母屋の他、子どもが独立する前に住んでいた離れがあります。この離れは現在誰も住んでおらず、放置しています。将来の私の相続を考えたとき、離れをそのままにしておいても問題ないでしょうか。現在、私は一人暮らしをしており、相続人となるであろう子どもたちはすでに全員独立して、別の場所で居を構えています。恐らく相続後に自宅を売却するのではないかと思います。

A-1
ワンポイントアドバイス

 相続開始後に相続人が空き家を売却した場合には、「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除(以下、本制度)」という制度の適用を検討されるとよいと思います。離れがある状態でこの制度を適用する場合、不動産の建築年や取引条件が本制度の適用条件を満たしても、敷地全体のうち自宅(母屋)の床面積の占める割合についてのみ適用を受けることになり、離れの部分は適用の対象から外れます。

A-2
詳細解説
1.本制度の概要

 相続または遺贈によって被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を売却し、一定の要件に当てはまるときは(主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限る)、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる制度です。

2.「主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物」とは

 「主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物」とは、「亡くなった方の生活の本拠であった自宅」をいいます。ゆえに、自宅(母屋)以外の「離れ」は「本拠であった自宅」にあたらないため、本制度の適用を受けることはできません。

【国税庁HPより抜粋】
相続の開始の直前においてその土地が用途上不可分の関係にある2以上の建築物(母屋と離れなど)のある一団の土地であった場合には、その土地のうち、その土地の面積にその2以上の建築物の床面積の合計のうちに一の建築物である被相続人居住用家屋(母屋)の床面積の占める割合を乗じて計算した面積に係る土地の部分に限ります。
3.具体的な事例

【事例の内容】

A 敷地面積 B 自宅(母屋)の床面積 C 離れの床面積
1,000u 300u
(被相続人居住用家屋)
200u

【計算方法】

  • @ 自宅(母屋)の床面積割合計算
    B 300u÷(B 300u+C 200u)=0.6
  • A 本制度の適用を受ける敷地面積の算出
    A 1,000㎥×@で算出された割合 0.6=600u

 この具体例の場合、敷地面積1,000㎥に対して、600uについてのみ本制度の適用を受けることができます。

 将来の相続においてどのような遺産分割協議が行われるか、実際にご相談者様が住んでおられる土地が売却されるか否かは不透明ですが、少なくとも本制度の適用を受ける場合に、最大限の恩恵を受けるのであれば、離れが現存のままであると、上記のように適用対象から外れてしまう部分があることにご留意ください。

 その他、具体的な本制度の適用範囲、それに伴う税金の計算についてご不明な点がありましたら、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

<参考>
 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

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