トラブルにならないための〜法律の相続対策
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文書作成日:2024/06/20
戸籍証明書等の広域交付制度

今回は相談事例を通じて、戸籍証明書等の広域交付制度について、ご紹介します。

Q
今月のご相談

 父が亡くなりました。相続の手続きには、父の出生から死亡までの戸籍謄本が必要と聞きました。父は生前、転勤が多く本籍地を何度も変更していたようで、戸籍の収集が大変だと思っていたところ、戸籍証明書等の広域交付制度を利用することで収集の負担を軽減できると聞きました。制度について詳しく教えてください。

A-1
ワンポイントアドバイス

 2024年(令和6年)3月1日より、戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律第17号)が施行されました。これにより、ご相談者様の最寄りの役所で、全国各地の戸籍をまとめて請求することが可能となりました。

 改正前は、各市区町村で個別にシステムを構築していたため、本籍地のあった市区町村に個別に請求する必要がありました。今回の改正により、市区町村役場が法務省(戸籍情報連携システム)と連携を図ることで、1ヶ所の役場(本籍地ではない、かつ最寄りの市区町村役場)への申請で、お父様の本籍地であった各市区町村役場に保管されている戸籍の請求を行うことができるようになりました。

A-2
詳細解説

 上記のような便利な制度ではありますが、注意点もいくつかあります。

  1. 必ず窓口に請求者本人が出向く必要があります。郵送や代理人では請求できません。
  2. 請求できる範囲は、本人・配偶者・直系尊属(父母、祖父母など)・直系卑属(子、孫など)のみです。
    兄弟姉妹や叔父叔母・甥姪の戸籍の請求においては、この制度は利用できません。
  3. 顔写真付きの身分証明書(運転免許証やマイナンバーカードなど)の提示が必要となります。お持ちでない場合は、この制度は利用できません。
  4. コンピュータ化(※)されていない一部の戸籍は、市区町村間のネットワークで共有できず、取得することができません。
    (※)1994年(平成6年)の法改正に伴い、それまで紙に手書きやタイプで記録されていた戸籍を磁気ディスクに記録し、調製できるようになりました。これを戸籍の「コンピュータ化」「電算化」といいます。
  5. 制度を利用し請求できるのは、全部事項証明書といわれる戸籍「謄」本です。一部事項証明書や個人事項証明書といった戸籍「抄」本の請求はできません。

 1ヶ所への請求で済むことから、申請者の手間や負担を軽減できる反面、平日に時間を確保できない方や、役所へ足を運ぶことが困難な方は利用が難しい制度です。

 また、兄弟姉妹などが法定相続人になる場合、この制度の利用で取得できる戸籍は、直系の第一順位(直系卑属)、第二順位(直系尊属)の相続人がいないことが証明できる範囲に限ります。一度の請求で相続の手続きに必要な範囲の取得はできませんので、ご注意ください。

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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